アイドル推し活は操作できない育成ゲームだ

アイドルの魅力は成長にある。

そう言ってしまうと、あまりにもありきたりである。たぶんアイドルについて何か語ろうとした人の半分くらいは、一度ここを通っている。

それでも、結局私はそう思っている。

ただし、やっぱり下手な子なら誰でもいいというわけではない。

歌えない。踊れない。しゃべれない。何もできない。だから伸びしろがある。というのは少し違う。

伸びしろという言葉は便利だが、何もないところに使うと、だいたいただの願望になる。将来性があるのか、こちらが将来性を見たがっているだけなのか、その境目はかなり曖昧だ。


それでも、ときどき気になる子がいる。

オーディションの裏側で泣いていたり、うまくできなくても何度も繰り返していたり、前にはできなかったことが少しずつできるようになっていたりする。一生懸命なのだ。芯が強い、と言ってもいい。

それから、これは急に話が雑になるが、なんとなくかわいい。守ってやりたい。さらに、うまく説明できない華がある。

ここまで理由を並べておいて、最後は「なんとなく」である。人を好きになる理由など、たいていそんなものだと思う。

応援したくなる何か

私がモーニング娘。加入前の譜久村聖さんを気にしていたのも、そういうところだった。

当時の彼女は、ハロプロエッグ、いまでいうハロプロ研修生にあたる立場にいた。注目はされていたが、圧倒的な実力者というわけではなかった。むしろ、スキルの面では少し危うさが目立っていたと思う。

それでも、不思議な色気があった。

派手に目立つというより、なぜか視線が止まる。うまく言葉にできないが、応援したくなる感じがあった。

久しぶりに開催されたモーニング娘。の9期オーディションで、彼女は一度落選した。ところが、その後にサプライズで加入が発表された。応援していた身としては、かなり劇的であり感動的な出来事であった。

その後の彼女は、少しずつ力をつけ、フクムラダッシュなる名場面を生み、最後のプラチナ期メンバーである道重さゆみさんからリーダーを引き継ぎ、長くグループを支えた。

最初はまだ頼りなく見えた子が、いつの間にか後輩を率いる側になる。

歌やダンスがうまくなるだけではない。

責任を背負うようになり、言葉に重みが出て、グループの空気まで作るようになる。

私はたぶん、そういう変化を見るのが好きなのだ。

Juice=Juiceの植村あかりさんもそうだった。

研修生時代から、とにかく目を引く美貌があった。年齢にそぐわないほどきれいなのに、少しドジで、歌はかなり不安定だった。

Juice=Juiceには末っ子として加入した。

正直に言えば、当初はビジュアルを買われての加入だったとは思う。

けれど、それでよかったのだと思う。歌割りは少なく、まだできないことも多い。それでも、一生懸命で、どこか放っておけない。

その後、少しずつ歌えるようになり、立ち位置も変わり、最後にはリーダーとしてグループを引っ張る存在になった。

こういうのが見たいのだ。

完成された人も必要である

ただ、こういう未完成なメンバーばかり集めても、グループはうまくいかない。

やはり、最初から強い人も必要なのである。

鞘師里保さんや宮本佳林さんのような、明らかに空気の違うエース。

歌える。踊れる。真ん中に立ったときの説得力がある。

そういう人がいるから、まだ不安定なメンバーも、その横で成長していける。

私自身、完成されたアイドルも好きだった。

嗣永桃子さんを本格的に追い始めた2010年前後には、彼女はすでにかなり完成されていた。

キャラクターは確立されていて、トークもそつなくこなし、ライブでは圧倒的なパフォーマンスを見せる。

トーク中の「ももち」と、パフォーマンス中の嗣永桃子さんには大きな落差があった。

あれだけふざけたキャラクターを前に出しながら、いざ歌って踊れば、隙がない。

そのギャップが好きだった。

鈴木愛理さんもそうだった。

彼女は圧倒的なパフォーマンスで℃-ute Buono!を牽引した。

完成されたものを見る楽しさは、たしかにある。

しかも、本当にすごい人は、完成したように見えてからも少しずつ更新されていく。

だから見飽きない。

グループには現在と未来がある

理想のグループは、全員が未完成でも、全員が完成済みでもないのだと思う。

絶対的なエースがいる。

歌に強い子がいる。

ダンスに強い子がいる。

まだ不安定だが、なぜか気になる子がいる。

一芸だけ妙に光っている子もいる。

そういうメンバーが混ざることで、グループの現在だけでなく、これから先まで見えるようになる。

メンバーの卒業と加入を繰り返す仕組みも、よくできている。

ある程度完成されたグループに、新しいメンバーが入る。

そこでまた、できないことや、ぎこちなさや、成長の余地が生まれる。

完成度を保ちながら、物語だけが新しくなる。

アイドルグループが長く続くためには、かなり合理的な仕組みなのだと思う。

育成コマンドのない育成ゲーム

研修生を見る楽しさは、育成ゲームに少し似ている。

この子は歌が伸びそうだ。

この子はダンスだろう。

この子はエースになるかもしれない。

この子は技術より華で勝負するタイプだ。

勝手に能力を見積もり、将来を予想する。

ただし、普通の育成ゲームと違って、こちらにはほとんど何もできない。

レッスン内容は決められない。

能力値も振れない。

休ませることも、特訓させることもできない。

こちらにできるのは、応援することくらいである。

それなのに、目をつけていた子がデビューしたり、歌割りが増えたり、人気が出たりすると、自分の見る目まで証明されたような気になる。

何ひとつ育てていないのに。

古参ファンは元カレの顔をする

そして、いざ人気が出ると、少し寂しくなる。

もう自分が支えなくても大丈夫だ、という気持ちが半分。

みんなに魅力がバレてしまった、という勝手な悔しさが半分。

売れてほしいと願っていたはずなのに、売れたら少し距離を取る。

かなり面倒なファンである。

しばらくして、たまに映像を見ながら、

「俺はこの子がまだ全然ダメだった頃から知っている」

と、元カレのような顔をする。

交際した事実は一度もない。

一瞬の輝きに惹かれる

もちろん、すべての子が思ったように伸びるわけではない。

期待していたほど歌がうまくならないこともある。

人気が出ないまま卒業することもある。

努力しても届かないところはあり、才能には限界がある。

それも含めて、その人の物語なのだと思う。

ただ、本人の人生として考えれば、アイドルはかなり厳しい仕事である。

一瞬だけ強い光を浴びても、その先が保証されているわけではない。

卒業後、ソロで順調に活躍できる人は多くない。

新しいメンバーは次々に入り、ファンの関心も移っていく。

応援する側は、その残酷さを薄々知りながら、普段はあまり見ないようにしている。

こちらが惹かれているのは、その人の人生全部ではなく、ある時期の輝きだからだ。

それは少し勝手で、少し後ろめたい。

けれど、だからといって、その輝きが嘘になるわけでもない。

昨日までできなかったことが、今日できるようになる。

端にいた子が、少しずつ前に出てくる。

泣いていた子が、後輩に声をかける側になる。

その変化は、たしかに美しい。

評論家の顔をして距離を取る

最近は、以前ほどアイドルを追っていない。

新しいグループを見ても、

この子はエースだな。

この子は歌で支えるタイプだな。

この子は成長を楽しむ枠だな。

などと、評論家のようなことを考えている。

昔より見方がわかってきた、と言えなくもない。

ただ、同じ動画を何度か見ていると、少しずつ名前を覚えてしまう。

もう少し見てみようと思う。

過去の動画を探す。

オーディション映像にたどり着く。

泣きながら練習している姿を見る。

そこまで来ると、だいぶ危ない。

私はアイドルから離れたわけではないのだと思う。

社会人になり、忙しくなり、深く入りすぎないよう気をつけるようになっただけである。

評論家のように役割を見分けていても、根っこのところは昔とあまり変わっていない。

結局また、同じことを思う。

この子は、伸びるかもしれない。

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